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カバーリング技術。理想の風合いを求めて、20年間繰り返した試作。
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カバーリング技術。理想の風合いを求めて、20年間繰り返した試作。

2026.09.03ものづくり読了 6分
カバーリング技術。理想の風合いを求めて、20年間繰り返した試作。
カバーリング技術。理想の風合いを求めて、20年間繰り返した試作。

ひとことで「やわらかいタオル」と言っても、そのやわらかさの質はさまざまです。私たちが20年ほど前から独自に研究を重ね、自社ブランド『KUSU the sea』の骨格ともなっている「カバーリング技術」。その技術の背景には、理想の使い心地を追い求め、何百通りもの試作を繰り返した職人たちの、気の遠くなるような試行錯誤の歴史があります。

一、きっかけは、シルクの糸をつくることだった

この技術開発が始まったのは、約20年前のこと。当時は現在のように「環境への配慮」を第一に掲げて始まったプロジェクトではありませんでした。出発点は、「シルクを混綿(こんめん)した、これまでにない手触りの高級な糸をつくることはできないか」という、純粋な風合いへの探求でした。

当時、市場では「無撚糸(むねんし)」と呼ばれる、糸の撚りをなくした非常にやわらかいタオルが主流になりつつありました。しかし、無撚糸にはいくつかの弱点がありました。触った瞬間はたしかにやわらかいものの、コシがないために使うとすぐにパイルが寝てしまい、拭き心地が損なわれやすいこと。そして、洗濯を繰り返すうちに毛羽が抜け落ちやすいことでした。

「やわらかいけれど、しっかりとしたコシがあるパイルをつくりたい」

無撚糸の持つやわらかさを活かしつつ、道具としてのタオルの弱点を克服する。その理想を満たすために私たちが着目したのが、ふわふわの綿(わた)の束のまわりに別の極細の糸を螺旋状に巻き付ける「カバーリング技術」でした。

二、何百通りの試作と、立ちはだかった壁

しかし、理想のパイルを形にする道のりは、困難の連続でした。芯となる綿の束を固定しつつ、やわらかさを損なわない最適なカバー用の糸と、その巻き付け条件を見つけ出す必要があったからです。

カバーリングに綿糸を採用した際、パイルをより繊細にしようと極細の糸を選んだところ、今度はその細い糸が肌をちくちくと刺激してしまい、拭き心地が硬く感じられるという課題に直面しました。

また、カバーリング糸の存在を消すことを求めて再生繊維を試したときには、タオルの製造工程を経る過程でキュプラが劣化してしまい、織る段階で糸が何度も千切れて機械が止まり、製品にすることすらできませんでした。

巻き付ける糸の素材選びだけでなく、芯となる糸の太さ、巻き付ける糸の「撚り回数」や「強さの加減」など、満たすべき条件は無数にありました。巻き付けが強すぎればタオルはゴワゴワと硬くなり、逆に甘すぎれば無撚糸と同じように毛羽が抜けてしまいます。

私たちは、シルクから綿、再生繊維にいたるまで、あらゆる組み合わせを試し、条件を少しずつ変えながら、何百通りもの試作を手探りで繰り返していきました。

三、濡れ返しのない拭き心地と、時を経てつながった価値

こうした長年の試行錯誤の末に、私たちは一つの最適解に辿り着こうとしています。それが、「KUSU the sea」に採用予定のカバーリング糸です。(2026年8月現在)

この技術によって生まれたパイルは、やわらかさに加え、触れた瞬間に水をスッと吸い上げる高い吸水性を持ちながら、パイルが自立しているため、濡れた後も肌にペタッと張り付くような「濡れ返し」がありません。やわらかさの中に一本の芯が通ったような、さらっとした清涼感のある拭き心地。これが、『KUSU the sea』のベースとなっています。

私たちが20年前から進めてきたこの開発は、もともとは純粋に「心地よさ」を追求したものでした。しかし、一般的に無撚糸のような風合いを効率よくつくるために用いられる「水溶性プラスチック(PVA)を混ぜて後から熱水で溶かす」という手法に対して、私たちはかねてよりかすかな疑問を抱いていました。

「本当に、このままで大丈夫なのだろうか」

かつて私たちが抱いたその小さな引っかかりと、理想の風合いを求めて泥臭く重ねてきたカバーリングの技術。それらが今、時代を経て「プラスチック(PVA)に頼らない、海に過度な負担をかけないものづくり」という、私たちが心から誇れる選択肢として結実しています。

一つの理想が形になりつつありますが、私たちの開発はこれで終わりではありません。現在も、さらに異なる肌触りや、多様な用途に向けた新しいカバーリング糸の研究と試作を、私たちは続けています。

Technical & Process Reference

(このセクションは、ページの最下部に配置します)

  • 複合被覆糸(カバーリング糸)の幾何学的拘束と材料力学(Geometric Constraint and Tensile Strength of Covered Yarns)カバーリング技術は、実質的に無撚(撚り回数$T=0$)の綿繊維束(コア部)の外周に、極細の綿単糸(シース部)をらせん状に巻き付ける複合構造を採用しています。シース糸の巻き付けピッチ$p$および螺旋角$\theta$を動的に制御することで、コア部の無撚繊維に対して適切な法線方向の圧縮応力(Radial Pressure)を付与し、繊維間の摩擦力(Frictional Interlocking)のみで製織応力に耐えうる引張強度$\sigma$を確保します。これにより、繊維同士がねじり合わされることなく自由運動を保持できるため、無撚糸と同等以上の優れたバルキー性(ふくらみ)と、製織に耐えうる物理的強度を高度に両立します。
  • パイルの自立性と濡れ返し(ウェットバック)防止の界面化学(Pile Elasticity and Wet-back Prevention Mechanics)使用時の「濡れ返し(水分が再び肌に付着する不快感)」は、濡れたパイルが自重および水分張力によって倒伏し、肌との接触面積が増大することで発生します。カバーリングパイルは、シース糸による三次元的な構造支持力(Bending Stiffness)を持つため、水分を吸収した後もパイルが座屈(倒伏)せず自立を維持します。これにより、毛細管力(Capillary Pressure)による迅速な吸水を促しつつ、肌に対する接触面積を最小限に抑制。毛細管流体力学(Lucas-Washburnの式に基づく流体挙動)において、表面のドライ感と清涼感を安定的に保持する物理的障壁を形成します。